文人暴食/嵐山光三郎

家の近所の本屋さんで風呂で読む本を探していた時に、たまたま平積みになっていたので購入したんですけど、この本むちゃくちゃ面白いです。
食べるのが好きな人や、文豪ネタがお好きな方はたまらない内容だと思います。
37人の作家の食にまつわるエピソードがてんこ盛りです。

後で「文人悪食」という本の続編だということを知ったので、そっちも買って今読んでいるところです。

各人の感想をメモ程度に書き連ねてみようかと思います。

☆小泉八雲
もしかしたら有名な話かもしれないのですが(私は知らなかったんですけど)、若い頃綱引きのような格闘技競技の最中に綱が左目を直撃、失明してしまったんだそうです。
目が悪いせいか音に敏感だったそうな。
アレ、食べ物の話がないな(^_^;)

☆坪内逍遥
早稲田の文学科を創った人やね。
芸者の女と結婚し、子よりも嫁に贅沢をさせ、その嫁は逍遥には贅沢をさせ、書生にはしょうもないもんばっかり食わせとったらしいです。
って、そんな簡単に解釈していいのか、自分。
でもまぁ、だいたいそんな感じの人です。

☆二葉亭四迷
これも私は知らなかったんですけど、親父に小説なんぞ書くようなヤクザもんは「くたばってしめえ」と言われたところから、この筆名になったそうで・・・、ダジャレかっ!!
飼い犬を家族以上にかわいがったという、こっちもやっぱり変な人。
甘いものと煙草が好きで、それらを摂取できなくなると生きる気力をなくし、あっというまに衰弱し亡くなってしまったというのだから、人間なんにせよ生きがいを失うといけないのねん。

☆佐藤左千夫
「野菊の墓」の人やね。
牛乳搾取業を営みながら歌人としても活躍した人。
茶の湯にうるさいけど、作法は気にせずゴーイングマイウェイ。
いいな、こういう人。
牛乳屋の仕事は一日十八時間労働、体力をつけるためにご飯に牛乳をかけたものを、しかも何杯も食べたらしい。
ムベェ。

☆南方熊楠
とにかく何でも食べる人。
そして食べたものはいつでも吐けるという特技の持ち主。
菌類の研究で名を残すことが出来たのは、恐らくこのいつでも吐けるという特技の成せる業なんじゃないでしょうかネェ。
つまりは発見しては食し、毒気のあるものは吐く、と。
大学の頃にちょっと熊楠に興味があって書物を読もうとしたのですが、チンプンカンプンで断念したのを思い出しました(>_<)
いつでも吐けるからとにかく何でも食うんだけど、遂には男性までくっちゃったそうで・・・。
しかも、研究熱心なお方なので、そのようなことまで全て記述が残っているというのだから驚くよね。

☆斎藤緑雨
アノ樋口一葉に恋心を抱いていた人やね。
いっそくっついちゃえば良かったのにねぇ。なんて勝手なことも言ってみる。
まぁ、当の樋口一葉は師の半井桃水に夢中でしたからね。
そうそう、思い出したんだけど、樋口一葉は結局半井桃水への思いを遂げられず死んでしまって(自身の心の中では二人は相思相愛であると思い上がっていたらしいけど)、いわゆるヴァージンで死んだとも言われている。
でも、女好きの半井桃水のことだから、実は陰で二人はできていたんじゃないのかという詮索していた人もいたらしく、そのことについて桃水は「あんな顔色の悪い女、気持ち悪い」と一葉亡き後、発言していたらしいです。
ああ、なんてかわいそうな一葉、死んでまで振られた男にそんな事言われるなんて・・・。
だから、やっぱり緑雨とくっついちゃえば良かったのよ。

☆徳冨蘆花
自分の父親が亡くなった時に赤飯を炊いたという。
親の金で不自由なき暮らしをしておきながら、嫌なやつ。
かなりの美食家を豪語していて、実際幼少時には弁当がまずいと箱ごと川に捨てたという。
やっぱり嫌なヤツ。
芦の花が好きという事で筆名を蘆花に、そして芦花公園に住んでいたというから、またダジャレかよっ!!

☆国木田独歩
こちらもかなりの美食家。
死の淵にあっても水密桃2つも食べ、まだ飽き足らないのか、最期の言葉が「アイスクリームを食べたい」なのだから、いやはや恐れ入る。
でも「アイスクリームを食べたい」なんて言って死ぬなんて、ちょっと恥ずかしいよね。

☆幸徳秋水
荒畑寒村の内縁の妻をくっちゃった人。
大逆事件で誤認逮捕され、その後自身を罰するかのように死刑を受けた。
未成年禁酒法案を揶揄した「老人禁酒法案」という作品が取り上げられているのですが、これがなかなか面白いです。

☆田山花袋
自身と愛人との愛欲関係を暴露し小説を書くというスタイルの人。
愛人とは17年間も関係が続いたそうで・・・。
あわわ。
匂いフェチだったそうな。

☆高浜虚子
リンゴ大好きっ子。
子じゃないけど。
若い頃より胃弱で、なおかつ便秘症であった虚子は朝は牛乳、もしくは林檎汁がかかせない。
それを食さないとウンコが出ない。
旅に出たとき、林檎を荷物の中に入れるのを忘れて、二人の娘相手にパニクったという。
いい大人なのにね。

☆柳田国男
彼の書いたものには「美味い」とか「不味い」という味覚の表現はほとんどなく、あくまでも民俗学者としての目線でしか食事とは向かい合えなかったという。
ちょっと寂しいわね。
どんなに偉くなっても養子という負い目は拭いきれなかったご様子。
柳田さんが言ったこの言葉に涙が出るくらい凄い感銘を受けたので、ちょっと長いけど、自分のためにも書き記しておきたい。
「明治以降の日本の食物は、ほぼ三つの著しい傾向を示していることは争えない。
その一つは暖かいものの多くなったこと、二つには柔らかいものの好まるるようになったこと、その三にはすなわち何人も心付くように、概して食うものの甘くなって来たことである。
これに種目の増加を添えて、四つと言ってもよいのか知らぬが、こちらはむしろ結果であった。
人の好みがまず在来のものの外へ走って、それが新たなるいろいろの方法をよび込んだ。」
もちろん研究に裏打ちされた発言なんだけど、まるで予言者だよ、アンタ。

☆鈴木三重吉
童話・童謡雑誌「赤い鳥」の主宰者。
昼間は子ども達のためにメルヘンに没頭している人間が、夜になると一転、酒を飲んではからむ、暴れるのとんでもない野郎に大変身。
その酒癖の悪さは天下一品で、漱石の家を出入り禁止になってしまうくらい。
あー、やだやだ、どこかの誰かを見ているようね(もちろん自分)。
ちなみに彼の自宅は目白にあり、現在「千種画廊」となっている。
今度行ってみよっと。

☆尾崎放哉
東大卒のスーパーエリートちゃん。
なんだけど、勤めていた保険会社を酒が原因で失職。
以後寺男となるのだが、以前の贅沢三昧が恋しく、挙句の果てに多方面に金の工面をする始末。
お酒、気をつけましょう、本当に。

☆武者小路実篤
「仕事の依頼を断る手間を考えれば、書いたほうが早い」と書きに書き続け、なんと著作は700冊を超えるという。
武者小路が目指した「新しい村」が今のところの私の理想なんだけど、失敗したということはやっぱり難しいんでしょうなぁ。

☆若山牧水
酒と旅の歌人。
とにかく酒の歌が多い。
どの歌も酒好きにはたまらないけれど、身につまされる歌ばかり。
ひどいアル中で「10メートル近づいても腐ったゴミ箱のような強烈な匂いがして、口中はただれ、目は充血し、酒がきれると手がふるえた」んだってさ。
私の酔狂なんて、まだまだかわいいもんよ。

☆平塚らいてう
年下のヒモ的愛人を「つばめ」と呼ぶのは、彼女が起こした事件かららしいですよ。
つばめ、いいですねぇ。
普通の日本人だと、幼少時は質素な日本食、そのうちにこってりとした西洋料理を好むようになり、更に歳を重ねるにしたがってまた日本食に戻る、というパターンが多いんだけど、彼女の場合は真逆。
スーパー金持ちの家に育ち、血が滴るようなステーキやビスケットなどの食生活にまるでなじめず、大人になって自らで食が選べるようになると、玄米や野菜を一貫して食べ続け、最終的には長生きしてしまったというのだから恐れ入る。

☆折口信夫
とにかく料理が上手だったらしいです。
紹介されている食事日記を読むと、よくもまぁこんな時代にこれだけのものが食えたもんだと感心します。
しかし、コカイン吸引しすぎで嗅覚はバカだったらしいです。

☆荒畑寒村
入出獄を繰り返す中で書いた監獄料理の話が面白い。
すっごい不味そうなんだけど、描き方が絶妙でちょっと食べてみたいと思ってしまう。

☆里見弴
有島武郎の弟ですね。
志賀直哉に対しては同性愛的感情を抱いていたらしいです。
ドキドキですね。
食べ物随筆が多数紹介されているのですが、そのどれもが面白いです。
なんでもよく食べ、長生きもしたのですが、胡麻だけは嫌いだったそうです。

☆室生犀星
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」の人です。
紹介されている作家陣のなかで、一番悲惨な幼少時代を送ったといっても過言ではないです。
石川県、寒そうだなぁ。

☆久保田万太郎
晩年はすこぶる評判の悪かった方のようで、著者の嵐山さんも氏を拝見したことがあるそうなのですが、その姿はまるで暴力団組長か成金の金貸屋の風情であったと書いています。
食通で、大食いで、見栄っ張り。
しかし、お寿司が食べられなかった。
そうそうたる面子が揃った美食会で寿司がでた。
見栄っ張りで意地っ張りの万太郎は嫌いな寿司を口にする。
そして赤貝を喉につまらせ、そのまま帰らぬ人となってしまった。
解剖した医者は「吐き出せば助かったのに」と話す。
飲み込まなければかっこ悪いと思ったんでしょうね。
命がけではった見栄ですな。

☆宇野浩二
とにかく女好きで周囲の評判もめっぽう悪かった。
食道楽の父を反面教師として本人は食事嫌悪症で、酒も飲まず、ひたすら女遊びのみであったという。
しかし、そうはいっても、やはり人間は食わねば生きていけないわけで、そこら辺の葛藤の中で発狂し遂には薔薇を食べてしまったという伝説持ちでもある。

☆佐藤春夫
谷崎潤一郎の妻を奪った人やね。
まぁ、そういうと春夫は人でなしのように聞こえるけれど、潤一郎は妻の妹とできていたというから、どっちもどっちだ。
春夫の代表作に「田園の憂鬱」がある。
都会の生活に疲れ田舎に引っ越すが、次第に田舎生活も嫌になっちゃった、みたいなどうしようもない男の話。
また勝手な解釈しちゃった。
でも、だいたいそんな感じです。
門下生がたくさんいたらしいのだが、あんまり皆に好かれてはいなかった様子。
紀伊勝浦の実家をなかば追い出されるような形で出てきたのだが、生前の住居はその紀伊勝浦に移築されてしまったというのは嫌味というか、なんだかかわいそう。
という話は実は自分で調べた。
家の近くの図書館を探しつつ散歩していると「佐藤春夫旧住居跡」があったんで、近くに住んでいたんだなぁと気になって調べてみた次第なんです。
この人の最期の言葉もしょうもなくて、ラジオ番組の収録中に「私の幸福は」と発言してそのまま亡くなったんだって。
私の幸福は・・・なんだったんだろうね。

☆獅子双六
かなりの健啖家の食通で、あの北大路魯山人を「味がわからぬ輩」と言い放ち、またそれに見合うだけの食歴の持ち主であった。

☆金子光晴
「私はあなたのうんこになりました」の人。
先日の「名作平積み大作戦」でも紹介されていました。
番組の中で、若い女性だらけの喫茶店内で執筆活動をする金子の写真が紹介されていましたが、着流しを着た骸骨のようなよれよれジジィでした。
しかし、この写真がいい例でとにかく女好き。
エロに次ぐエロです。
養父の入院中に見舞いに来た従妹とやっちゃったり、はたまた養父の看護婦に手を出したりと好き放題です。
食い気よりも色気、ですかな。

☆宇野千代
宇野千代さんは、生前「きょうの料理」で拝見したことがあります。
やはり料理はお上手だったようです。
最初の夫との子を6人堕胎しているとは知りませんでした。
単なるかわいらしいばあさんだと思っていたけど、人間生きていれば色々あるもんなんですね。

☆横光利一
正直これといった話がないんですけど(^_^;)
徹底した菜食主義で、却って栄養失調だった。

☆吉田一穂
この人もこれといった話がないんですけど(^_^;)
大戦前後の作家なんですけど、「餓死線」というのを体験し一時は絶筆状態にあったらしいです。

☆壺井栄
そういえば何故だかわからないけれど今時にまた「二十四の瞳」が本屋さんで平積みになっているのを見かけました。
彼女といえば小豆島。
小豆島といえばオリーブというイメージが強いんだけど、彼女は島のソーメンが大好きだったそうで「盆になるとどの家でもソーメンを食べていて、島中がソーメンをすする音の大合唱になる」と言うことを書いているんだけど、それがなんとも美味そうで・・・。
今でもそうなのかなぁ?
ちょっと気になるところ。

☆稲垣足穂
また最強ヨッパの登場です。
そしてまた「私はまだまだ大丈夫だわ」と変な自信をつけてしまう。
この人は凄いよ。
酒をやめようと思って我慢するも、一旦そのたがが外れてしまうと下痢便を漏らしてしまうほど飲んで、最終的には悪寒と震えが止まらず危篤状態に陥るというんだから・・・本当に酒、気をつけましょう。

☆草野心平
草野心平は宮沢賢治の才能を見抜いて、世に紹介した人ということで有名なのではないでしょうか?
国立あたりで居酒屋経営をしながら執筆活動をしていた人。
でも喧嘩っ早くて嫌な客には容赦しない。
かっこいいですなぁ。
ちなみに壇一雄と仲が良く、彼から貰った犬にもダンと名づけたらしいです。

☆平林たい子
彼女は男の力を借りて上へのし上がろうとした典型的パターンな感じがする。
当時流行のアナーキストの連中に近づいては同棲、離別を繰り返すというのは、ある意味女として正直というか、なんというか・・・。

☆武田泰淳
喫茶店ではたらく房子という女性が気になる武田は彼女を食事に誘う。
房子は「食べることが大好きで、おいしいものを食べるのが一番好き」と楽しそうに食べる。
その量は半端ではなくて、アイスクリームを食べた後渦巻きパンを買い、とんかつ屋でとんかつとさっき買った渦巻きパンをつまみに日本酒を飲み、その後またアイスキャンディを買い食いするという有様。
この女性こそ後の武田百合子なのだった。
泰淳も彼女につられて食べることに愉しみを覚えていったようなのだから、女子の皆さんはダイエットなんぞ気にせず、何でも美味そうに食べることを薦めるね。
どんな出会いが待ってるやも知れぬぞよ。

☆向田邦子
向田さんはお店も開いていたくらいだし、彼女が書いたドラマには必ず家族の食卓というのが出てくるから、食べ物の話には事欠かない。
彼女いわく「金を払って、おもてで食べるのがカレーライス。自分の家で食べるのがライスカレー」だそうですよ。
沖縄にはあんまり「亭主関白」のような「お父さんが一番偉い」みたいな考え方がないのね。
どっちかっていうとお母さんが働いて、お父さんは涼しい木陰かなんかで酒飲んで寝てるっていうのが本来の沖縄の姿だと思う。
でも、向田さんのドラマに出てくる父親像というのは常に威張っている感じがして、若い頃は全然理解できなかったのよ。
今はどっちにしろ男性は女性の器量の良さに支えられているだけなのよねっていうことが何となく理解できる。
体たらくなオヤジを支えるのも、厳格なオヤジを支えるのも全て女性の懐にかかっているのよね。
また最近やっとそういう女性にも共感が持てるようになってきました。
掌で転がし続けますよ、フフフ。

☆寺山修司
私が持っている寺山修司のイメージは「スーパースペシャルマザコン」これに尽きる。
勝手なこと言ってスミマセン(>_<)
でも、男はみんなマザコンとはいえ、この人ほど屈折したマザコンはいないと思う。
自分のことを話すときに作り話をしてしまうのも、芸術的活動においても、全て母への愛憎が根底にあるような気がしてならないのよね。
母親も母親で寺山を溺愛しているんだけどね。

結局長くなっちゃったけどこんな具合。

牛鍋屋がよく出てくる。
牛鍋とはなんぞや?
牛丼やすき焼きとは違うのか?
気になる。

家の近くが結構出てくるので、暇なうちに史跡めぐりでもしてみたい。

それと上野精養軒がよく出てきて「文豪も通ったことだし、こりゃあ一回行ってみるべきか?」なんて思っていたけれど、最後のほうで嵐山光三郎自身が「現在の上野精養軒は単なる洋食屋になりかわってしまった。店員のサービスも行き届いていない。彼らはどれだけ凄い人たちが通った店にはたらいているということすら知らないのだろう」というような事を書いていて、行くのやめました。
要するに当時洋食を食わせてくれるお店は限られていたっていうだけで、今は多種多様なお店があるものね。

そんなわけで、おしマイケル。
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by tabalog | 2006-03-16 14:06 |

似てる有名人はガチャピンです


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